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2026 年成立の民法改正(成年後見及び遺言制度の見直し)について弁護士が解説

2026 年 6 月 17 日、「民法等の一部を改正する法律」(令和 8 年法律第 45 号)が参議院本会
議で可決・成立し、同年 6 月 24 日に公布されました。この改正は、成年後見制度が現行制
度として始まった平成 12 年(2000 年)以来、26 年ぶりの抜本的な見直しです。
成年後見制度の大規模な再編と、デジタル遺言(保管証書遺言)の創設・押印の原則廃止
という遺言制度の変革という 2 つの柱からなる今回の改正は、相続や生前対策を考えるす
べての方に直接影響します。
このコラムでは、相続に関する法律実務を多く取り扱う弁護士の立場から、改正の具体的
な内容・施行スケジュール・今すべき備えについてわかりやすく解説します。

成年後見制度の主な見直し・改正ポイント

本人の意思をより尊重するための意思決定支援の仕組みの充実

現行の成年後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の 3 類型
に振り分け、それぞれの類型に応じた代理権・同意権を後見人等に付与する仕組みです。
特に「後見」類型では、成年後見人が包括的な代理権を持ち、本人の意思にかかわらず財
産管理・身上保護を行うことができました。
しかしこの仕組みは、「本人の自己決定権を過度に制約している」「本人の意思・意向が十
分に尊重されていない」という批判がかねてからありました。今回の改正では、後見およ
び保佐の制度を廃止し、補助の制度に一元化することが決定されました。
一元化後の新制度では、本人が必要とする具体的な支援の内容に応じて、家庭裁判所が個
別に代理権・同意権の範囲を定めます。また、支援者が本人の意思や意向を丁寧に確認し
ながら支援を行う「意思決定支援」の仕組みが制度の中心に据えられます。
本人の判断能力が不十分であっても、できる限り本人自身の言葉・意思を尊重した支援を
行うという理念は、国連障害者権利条約の趣旨にも沿うものです。法律・実務の両面から、
本人を「保護される客体」ではなく「支援を受けながら意思決定する主体」として捉え直
す転換点となります。

必要な期間や目的に応じて利用しやすくする、柔軟な制度への見直し

現行の成年後見制度が抱える最大の問題の一つが、「1度始めると終わらせることができな
い」という硬直性です。最高裁判所の統計によれば、成年後見の申立ての主な動機として、
預貯金等の管理・解約、不動産の処分、相続手続が上位を占めています。つまり、成年後
見の多くは「不動産を売却したい」「遺産分割協議に加わる必要がある」といった特定の目
的のために申し立てられているのが実態です。
ところが現行制度では、その目的が果たされた後も後見が継続し、本人が亡くなるまで成
年後見人への報酬支払いと家庭裁判所による監督が続きます。このため、「費用対効果が見
合わない」「使いたくても使いにくい」という声が絶えませんでした。
今回の改正では、制度を利用する必要がなくなったと家庭裁判所が認めた場合に制度を終
了できる仕組み(いわゆる「終わらせることができる後見」)が整備されます。遺産分割の
ためだけに補助制度を利用し、分割が完了したら終了する、そのようなスポット的・目的
限定的な使い方が現実的な選択肢になります。これは、制度の利用を躊躇していた多くの
方にとって、大きな改善といえます。

親族後見人などの事務負担を軽減するための運用改善

成年後見制度の担い手として親族後見人が選任されるケースも少なくありませんが、「家庭
裁判所への定期報告が煩雑」「財産管理の記録作成が大変」「金融機関への対応が難しい」
といった事務負担の重さが、親族後見人の大きな悩みでした。
今回の改正では、親族後見人を含む後見人等の事務負担を軽減するための運用改善も図ら
れます。特定の事項に限定して代理権・同意権を付与する「特定補助」の仕組みにより、
必要な範囲での支援設計が可能になります。また、一元化された補助制度のもとで、支援
の内容・範囲を本人の状況に合わせて柔軟に設定できるようになることで、後見人等が抱
える画一的な管理義務の負担が緩和される方向で制度設計が進められています。

遺言制度の主な見直し・改正ポイント

パソコンやスマホ等で作成できる「保管証書遺言(デジタル遺言)」の創設

現行制度では、自筆証書遺言は遺言者が全文を手書きで記載することが原則です(財産目
録のみパソコン作成可)。高齢になって手が不自由になった方、文字を書くことが困難な方
にとって、遺言作成のハードルは低くありませんでした。
今回の改正で創設される保管証書遺言は、パソコン・スマートフォン・タブレット等で作
成した電子データ(電磁的記録)による遺言を、法務局(遺言書保管所)に保管する新し
い遺言方式です。
これにより、手書きが難しい方でも遺言を作成しやすくなるとともに、法務局での保管に
よって遺言の紛失・隠匿・改ざんのリスクが低減されます。また、相続開始後の検認手続
が不要になるなど、手続面での合理化も期待されます。
ただし、保管証書遺言はシステムの改修を要するため、施行は 2026 年 6 月 24 日の公布か
ら 3 年以内とされており、実際に利用できるようになるのは少し先のこととなります。

手書きの自筆証書遺言における「押印(ハンコ)」の原則廃止

現行の民法では、自筆証書遺言の成立要件として「氏名の自署」と「押印」の両方が必要
とされています(民法第 968 条第 1 項)。しかし海外の多くの国では押印は要求されておら
ず、日本独自の要件が「遺言作成のハードルを不必要に高めている」との指摘がありまし
た。
今回の改正により、自筆証書遺言における押印が原則として任意となります。氏名の自署
のみで遺言が有効に成立するようになり、遺言作成のハードルが下がります。
なお、この見直しは保管証書遺言制度の施行より早く、2026 年 6 月 24 日の公布から 1 年
以内(2027 年 6 月頃まで)に施行される予定です。
押印廃止後も、遺言の内容・日付・氏名の自署が必要であることに変わりはなく、遺言の
有効性はこれらの要件を満たすかどうかで判断されます。押印が不要になっても、内容面
での法的有効性を確保するためには、引き続き専門家への相談が重要です。

危急時遺言などにおける録音・録画データを用いた手続きの導入

病気や事故などで急に死期が迫った場合に利用できる「危急時遺言」(民法第 976 条)は、
遺言者が口頭で意思を述べ、立会人等が記録するという方式です。現行では書面による記
録が前提でしたが、今回の改正では録音・録画データを用いた手続きが導入されます。
これにより、緊急時に書面での記録が困難な場合でも、録音・録画データによって遺言者
の意思を記録・確認することが可能になります。ICT の活用によって遺言の実効性が高ま
る改正として、高齢社会における重要な意義を持ちます。

 新しい制度は「いつから」始まり、どう備えるべきか

遺言・成年後見の各制度における施行スケジュール

今回の改正は、内容によって 3 段階の施行スケジュールが設定されています。法律の公布
日は上記のとおり 2026 年 6 月 24 日です。
【第 1 段階】遺言の押印任意化等(公布から 1 年以内)
施行時期の目安は 2027 年 6 月頃まで。自筆証書遺言における押印廃止・危急時遺言への録
音録画導入などが対象です。
【第 2 段階】成年後見制度の見直し(公布から 2 年 6 ヶ月以内)
施行時期の目安は 2028 年 12 月頃まで。後見・保佐の廃止と補助への一元化・「終われる
後見」など、制度の抜本的な見直しが対象です。
【第 3 段階】保管証書遺言の創設等(公布から 3 年以内)
施行時期の目安は 2029 年 6 月頃まで。デジタル遺言(保管証書遺言)の創設など、システ
ム改修を要する改正が対象です。
いずれも「政令で定める日」とされており、現時点で具体的な日付は確定していません。
施行の詳細は今後の政令公布を待つ必要があります。

制度開始を待たず、今のうちから専門家と生前対策を進めるべき理由

今回の改正について、「新しい制度が始まってから考えよう」と先送りにする方もいるかも
しれません。しかし、それは大きなリスクです。
最も重要な理由は、生前対策の多くは、本人に判断能力がある間にしか行えないという点
です。遺言書の作成、任意後見契約の締結、家族信託の設計、生前贈与の実行などはすべ
て、本人が意思能力を有することが前提です。認知症等によって判断能力が低下してしま
うと、これらの対策を取ることが事実上不可能になります。
次に、施行までの間に相続が発生した場合は現行制度で対応するしかないという現実があ
ります。成年後見制度の見直しが施行されるのは最長で 2028 年 12 月頃となる見込みです。
それまでの間に親が亡くなり、認知症の相続人がいる遺産分割が必要になった場合は、現
行の成年後見制度を利用するほかありません。「改正を待てば楽になる」と考えて手続きを
先延ばしにすることは、かえって遺産分割や不動産処分の停滞を招くリスクがあります。
また、遺言書は今すぐ作成できるという点も重要です。保管証書遺言(デジタル遺言)の
施行は 2029 年頃ですが、現行の公正証書遺言や自筆証書遺言(現行の遺言書保管制度を
含む)は今この瞬間から利用可能です。押印廃止が施行されるまでの間も、現行方式で有
効な遺言を作成しておくことができます。新しい制度を待つ必要はありません。
制度の切り替え期だからこそ、判断能力のある今のうちに専門家に相談し、現行制度でで
きる対策を実行しておくことが、将来の選択肢を守ることに直結します。

法改正への対応や生前対策のお悩みは当事務所へご相談ください

今回の民法改正は、相続・遺言・成年後見に関わるすべての方にとって重要な変化です。
「自分はどう備えればいいのか」「親の認知症が進む前にできることは何か」「遺言書はど
のタイミングでどの方式で作ればいいのか」、こうした疑問は、改正内容と個別の事情を組
み合わせて考える必要があり、専門家への相談が最も確実な方法です。
当事務所では、相続・成年後見の取扱い実績豊富な弁護士が、遺言書の作成、任意後見契
約、家族信託などの生前対策や、遺産分割等の相続手続に関するご相談を幅広く承ってお
ります。法改正への対応には、制度を正確に理解したうえでの早めの準備が欠かせません。
「判断能力が低下してからでは手遅れ」にならないよう、お気軽に当事務所までご相談く
ださい。

この記事の執筆者
法律事務所羅針盤 弁護士 本田 真郷
保有資格弁護士、中小企業診断士、マンション管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
専門分野相続
経歴

千葉県千葉市出身
平成11年 千葉市立稲毛高等学校卒業
平成15年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
平成16年 司法試験合格
平成17年 最高裁判所司法修習生採用(第59期、大津修習)
平成18年 弁護士登録(千葉県弁護士会)
千葉県市川市の弁護士法人リバーシティ法律事務所に入所
平成23年 法律事務所羅針盤開設に参加
平成29年 筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻(税法コース)修了
平成29年12月
~令和元年11月 総務省官民競争入札等監理委員会事務局政策調査官、同省公共サービス改革推進室政策調査官(併任)

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