遺産分割で強硬な主張をしてくる相続人がいる場合の対応は?弁護士が解説
遺産相続が始まると、被相続人の財産をどのように分けるかについて、相続人全員で遺産分割協議を行います。しかし、全員がスムーズに合意できるとは限りません。相続人の中に、自分の取り分を最大化しようと考える、いわゆる「強欲な相続人」がいると、協議が滞り、さまざまなトラブルに発展する可能性があります。
強欲な相続人への対応は、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。
この記事では、遺産相続でトラブルに巻き込まれた際の対処法と、トラブルを未然に防ぐ方法について、わかりやすく解説します。
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遺産分割でよくある「強硬な主張」の具体例
相続の場面で、特定の相続人が強硬な主張をしてくるケースには様々なパターンがあります。よくある具体例を見ていきましょう。
・被相続人の介護を理由に多くの財産を要求
「自分は長年、親の介護をしてきたのだから、その苦労を金銭で評価して、他の相続人よりも多く遺産をもらうべきだ」と主張するケースです。これは、法的には、被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人に認められる寄与分の主張に当たり得るものです。しかし、寄与分が認められるにはかなりの貢献が必要であり、法的には認められない強引な主張が行われるケースも少なくありません。
・家業への貢献を理由に多くの財産を要求
「自分は家業を手伝ってきたから、他の兄弟姉妹はその分の財産を放棄するべきだ」と主張するケースです。これも寄与分が認められるかが論点となりますが、具体的な貢献内容や期間を客観的に証明する必要があります。
・法定相続分以上の財産を要求
「長男だから家を守るのは当然」などの現行制度上は理由に乏しい感情論などをベースとして、法定相続分以上の財産を要求するケースです。現行民法では、長男がすべての遺産を承継するという家督相続の考え方は採用されておらず、法律上は長男が他の兄弟姉妹よりも優先されることはないにも関わらず、現在でもこのような主張は散見されます。
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強硬な主張・要求をしてくる相続人がいる理由
強硬な主張をしてくる相続人は、なぜそのような行動に出るのでしょうか。その背景には、以下のような心理や事情があることが多いです。
・感情的なしこり
過去の親子関係や兄弟姉妹間の不満など、遺産分割とは直接関係のない感情的な対立が原因となっている場合があります。
・財産に対する強い執着
被相続人の財産を自分のものにしたいという強い欲求や、経済的な不安から、強気な交渉に出るケースです。
・法律知識の不足
法定相続分や寄与分、特別受益といった相続に関する正しい法律知識がないため、自分の都合の良いように解釈して主張している場合があります。
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強硬な主張・要求をしてくる相続人がいるときの基本的な対処法
強硬な主張をしてくる相続人がいる場合でも、感情的にならず冷静に対応することが重要です。
・遺産分割協議
まずは、他の相続人と協力して、強硬な主張をする相続人に対して客観的な事実に基づき、冷静に話し合いを試みます。被相続人の遺言書や財産目録など、証拠となる書類を提示しながら進めましょう。遺産分割は相続人全員で行う必要があるため、一人でも反対すると協議はまとまりません。
・遺産分割調停
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
調停では、調停委員が間に入り、相続人全員の意見を聞きながら解決策を探ります。調停手続上では法的根拠に乏しい主張は原則として取り上げられないため、身勝手な言い分は通りにくいでしょう。
・遺産分割審判
調停でも合意に至らない場合は、遺産分割審判へと移行します。審判では裁判官が遺産分割方法を決定し、相続人は審判のとおりに遺産分割を行わなければいけません。これにより、最終的には遺産分割問題が解決できます。
・弁護士への依頼
弁護士に依頼すれば、依頼者の代理人として、交渉や法的手続きをすべて任せることができます。法律の専門家が間に入ることで、感情的な対立を避け、円滑な解決を目指すことができます。また、調停や訴訟に発展した場合も、弁護士が書面や証拠の提出、裁判への出廷などを代行してくれるため、依頼者の負担は大きく軽減されるでしょう。
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強硬な主張をしてくる相続人がいる場合に弁護士に相談するメリット
強硬な主張をしてくる相続人がいる場合に弁護士に相談すると、次のようなメリットがあります。
・交渉の代理人として冷静に対応
弁護士が代理人となることで、依頼者自身が直接相手とやり取りする必要がなくなり、心身のストレスが軽減されます。弁護士が間に入ることで、冷静さを取り戻し、話し合いが進むことが期待できます。
・法的な根拠に基づいた交渉が可能に
弁護士は、法律や判例などの法的根拠に基づき、適正な遺産分割方法を提示します。これにより、相手の不当な主張を退け、依頼者の正当な権利を守ることができます。
・専門的な知識と経験による最適な解決策の提案
遺産分割は、寄与分や特別受益といった複雑な法律問題が絡み合うことがあります。相続の専門知識を持つ弁護士は、それぞれのケースに合わせた最適な解決策を提案し、迅速な問題解決をサポートします。また、相手が遺産を使い込んだ疑いがある場合、弁護士に依頼すれば相続財産調査を任せられるため、不審な部分を洗い出すことが期待できます。
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当事務所のサポート内容
当事務所では、相続問題に関する豊富な経験と専門知識を活かし、お客様一人ひとりに寄り添ったサポートを提供しています。
・遺産分割協議のサポート
他の相続人との交渉を代理し、お客様の正当な権利を守りながら、円満な解決を目指します。
・遺産分割調停・審判のサポート
調停や審判の手続きをすべて代行し、お客様の代理人として、有利な結論が得られるよう尽力します。
・遺言書の作成・執行サポート
将来のトラブルを避けるために、有効な遺言書の作成をサポートします。
強硬な主張をする相続人との話し合いに疲れてしまったら、ぜひ一度当事務所にご相談ください。お客様の状況を丁寧にヒアリングし、最適な解決策をご提案いたします。

千葉県千葉市出身
平成11年 千葉市立稲毛高等学校卒業
平成15年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
平成16年 司法試験合格
平成17年 最高裁判所司法修習生採用(第59期、大津修習)
平成18年 弁護士登録(千葉県弁護士会)
千葉県市川市の弁護士法人リバーシティ法律事務所に入所
平成23年 法律事務所羅針盤開設に参加
平成29年 筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻(税法コース)修了
平成29年12月
~令和元年11月 総務省官民競争入札等監理委員会事務局政策調査官、同省公共サービス改革推進室政策調査官(併任)


