相続開始後に他の相続人(被相続人の前婚の子)の存在が判明した場合に、他の相続人と 交渉し、現実的な遺産分割協議を成立させた事例
依頼者属性
〇年齢・性別:60 代・男性
〇被相続人との関係:子
〇相手方:被相続の前婚の子
〇居住エリア:東京都
〇争点:相続財産である不動産の単独取得に対する相手方の同意取得とその条件調整
相談から解決までにかかった期間
約 7 か月
相談に至った経緯
依頼者の父(被相続人)が亡くなり、目ぼしい相続財産は依頼者及び被相続人の自宅不動
産のみでした。
自身は被相続人の唯一の相続人であると考えていた依頼者は、司法書士に相談して、相続
登記申請の準備に着手しましたが、その過程で、相続関係を調査するため戸籍を収集した
ところ、被相続人には依頼者の亡母との婚姻に先立つ前婚があることが判明し、前婚にお
ける子が被相続人の相続人として存在することが判明しました。
このような状況が判明したため、このまま相続登記申請手続を進めることができなくなっ
てしまい、依頼者は当事務所に相談されました。
当事務所では、本件では預貯金等の換金性の高い財産が皆無であり、唯一の相続財産であ
る不動産も依頼者が居住中であるため換価が困難であることから、一般的な遺産分割協議
の打診を行うことは難しい事案であると判断しました。
そこで、従来、相続不動産の維持管理コスト(固定資産税等の支払を含む)を全て依頼者
が負担してきた事情も考慮し、依頼者と協議の上、相手方に対し、相続不動産の依頼者へ
の名義変更について、理解を求める依頼文書を送付することにしました。
そうしたところ、相手方から、全くの無償で名義変更を了承することはできないが、事情
の説明及び相応額の判子代(数十万円)の支払があれば協力する旨の回答を得ることがで
きました。
これを踏まえ、依頼者と相手方の間で、不動産は依頼者が取得し、その代償金として相手
方に一定金額の支払いを行う旨の遺産分割協議書を作成し、これに基づき、依頼者は無事
相続登記を行うことができました。
担当弁護士からのコメント
本件は、相続開始時にはその存在すら知らなかった相続人の存在が事後的に判明し、相続
手続に関する公算が大きく狂ってしまったものの、それでも実行可能な手続を誠実かつ適
正に進めた結果、混乱の度合いを最小限に抑えることができた事例と評価できるかと思い
ます。
被相続人や他の相続人と長期間交流がない場合であっても、相続人として有する権利の内
容に変動が生じるものではないため、本件でも相手方相続人には法律上の法定相続分が認
められ、法定相続分どおりの相続財産取得を主張された場合、原則としてはこれに応じな
いと相続手続進行は困難となる状況です。
依頼者にもこの点は十分理解をしていただきながら、それでも従来、依頼者が被相続人の
介護等を一身に引き受けてきたことや相続財産管理コストも全て依頼者が負担してきたこ
となどの事情を説得材料としたうえ、被相続人の生前の生活状況、相続財産に関する調査
状況、依頼者自身も十分な資力がないことなどの情報開示に努め、誠実な協議を心掛けた
ところ、相手方相続人の相応の理解を得ることができた事案でした。
この種の事案の成否はケースバイケースであり、全ての事案が上手く解決するわけではあ
りませんが、本件では、法的請求権としては弱みがあることなどの現況分析を早期に行い、
状況を踏まえた方針を適切に選択できたことが早期解決につながったものと思います。
なお、本件事案のように交流関係に乏しい相続人が存在する場合、本来、被相続人の生前
に、被相続人との間で遺言作成等を含む十分な相続対策を講じておくことがほぼ必須です
(本件依頼者にはこれが難しい事情もあったのですが)。
この種事案は相続開始後はできることは限られてしまいますが、生前対策であれば十分な
対策ができる場合も多いものですので、できる限りお早目に相続対策を検討することを改
めてお勧めします。

千葉県千葉市出身
平成11年 千葉市立稲毛高等学校卒業
平成15年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
平成16年 司法試験合格
平成17年 最高裁判所司法修習生採用(第59期、大津修習)
平成18年 弁護士登録(千葉県弁護士会)
千葉県市川市の弁護士法人リバーシティ法律事務所に入所
平成23年 法律事務所羅針盤開設に参加
平成29年 筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻(税法コース)修了
平成29年12月
~令和元年11月 総務省官民競争入札等監理委員会事務局政策調査官、同省公共サービス改革推進室政策調査官(併任)


