遺産を独り占めしようとしている相続人がいる場合の対応
大切な家族を亡くし、悲しみに暮れる中で始まるのが相続手続きです。本来、故人の遺志を尊重し、相続人全員で協力して遺産を分けるべきものですが、残念ながら、中には自身の利益を優先して遺産を独り占めしようとする相続人も存在します。
相続トラブルは、一度こじれると家族関係を決定的に壊してしまうことも少なくありません。しかし、感情的に対応するのではなく、法的根拠に基づいて冷静に対処することで、事態の悪化を防ぎ、あなた自身の正当な権利を守ることができます。
本コラムでは、遺産を独り占めしようとする相続人が行う不当な行為のパターンから、それらに対抗するための具体的な方法、そして弁護士に相談するメリットまで、専門家の視点から詳しく解説します。
1.遺産の分割方法の基本
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産をどれだけ相続するかを話し合って決めることとなります。
遺産分割協議が円滑に進めば良いのですが、遺産トラブルの予兆は、案外身近なところに隠されています。例えば、特定の相続人から遺産の情報がなかなか開示されない、話し合いを避けようとする、あるいは被相続人の通帳から不審な出金があることに気づいたなど、少しでも違和感を覚えたら注意が必要です。
2.遺産を独り占めしようとする相続人のパターン
遺産を独り占めしようとする相続人は、以下のうちの1つまたは複数のパターンを取ることが多くみられます。
a. 遺言書の隠ぺい・破棄
被相続人が自分に不都合な内容の遺言書を作成していた場合、その存在を他の相続人に知らせないために、遺言書を隠したり、破り捨てたりすることがあります。遺言書が自筆証書遺言である場合は、その保管者は、その遺言を家庭裁判所に提出して、検認を受けなければなりませんが、このような相続人は自発的な検認申立ても行おうとしません。
b. 財産の使い込み
被相続人が亡くなった直後に、被相続人名義の預金口座から多額の現金を引き出し、特定の相続人が使い込んでしまうパターンがあります。これらの行為は、不法行為にあたり、損害賠償の対象となる可能性があります。被相続人の財産を管理していた相続人が、他の相続人の知らないところでこのような使い込みを行ってしまった場合、被害が拡大してしまいます。
c. 他の相続人への情報提供を拒む
相続人の中には、被相続人の遺産に関する情報を他の相続人に一切開示しない者がいます。これも、遺産は自分が独占するという態度の表れであることが通常です。
d.話し合いに応じない
遺産を独り占めしようとする相続人は、話し合いを持ち掛けても応じようとせず、その結果、遺産分割協議が全く進行しないことがあります。
e.不当な贈与の主張
遺産にみえる財産があるものの、これは被相続人の生前に自分が贈与を受けたものであり、遺産ではなく自分の固有財産である、などの主張をされるパターンもあります。
3.遺産の独り占めへの対抗策:法的手段と実践的なアプローチ
遺産を独り占めしようとする相続人がいる場合、感情的な交渉は避け、冷静に、そして法的な根拠に基づいて対処することが、正当な権利を守るための最善の方法です。
(1) 徹底的な財産調査
まずは、被相続人の財産状況を正確に把握することが大切です。相続人間の信頼関係が薄い場合は、他者の情報に頼るのではなく、自らの手で調査を進めましょう。相続人であれば、相続人であることの証明資料(戸籍謄本等)を提示することにより、被相続人が取引をしていた銀行、証券会社、保険会社に対し、直接、被相続人名義の財産状況に関する照会を行うことができます。また弁護士に依頼して、より広範な金融機関への調査を検討すべき場合もあります。
(2) 相手方への明確な意思表示
話し合いに応じない相続人は、裁判手続等になった際には「自分は話し合いをしたかったのに、相手の方が応じなかった」など事実と異なる話をしてくるケースもあります。
話し合いに応じない相手方相続人には、内容証明郵便等の正式な書面をもって、遺産分割協議を求める意思を明確に伝え、将来の裁判手続等の際の証拠も併せて確保するようにしましょう。
(3) 遺産分割調停の申し立て
相続人間での話し合いでの解決が難しい場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停では、調停委員が当事者の間に入り、公正な立場で話し合いを整理してくれます。当事者同士が直接顔を合わせる必要がないため、感情的な対立を避けつつ、建設的な話し合いを進めることが可能です。
4.遺産を独り占めしようとしている相続人がいる場合に弁護士に相談するメリット
相続問題は、1度こじれると解決まで多大な時間と労力がかかります。弁護士に相談することで、このような負担を大きく軽減することができます。
弁護士に相談する主なメリットは以下のとおりです。
①冷静な第三者として交渉を代行
感情的な対立が激しいケースでは、弁護士が代理人として交渉にあたることで、冷静に事態を収束させることが可能になります。
②正確な遺産調査の実施
弁護士は、法律専門家としての知見を活用して、銀行、証券会社、保険会社や不動産などの遺産に関する調査を正確に行うことができ、遺産状況を正確に把握することが可能となります。。
③最適な解決策の提示
遺産分割に関する法的知識はもちろん、過去の判例や解決事例を豊富に知っているため、お客様一人ひとりの状況に応じた最適な解決策をご提案できます。
④煩雑な相続手続の代行
遺産分割調停・審判の申し立て、必要書類の作成など、煩雑な法的手続きをすべて弁護士が代行します。お客様は精神的な負担から解放され、安心して任せることができます。
5.当事務所のサポート内容
当事務所では、遺産分割を含む相続手続全般について、豊富な取り扱い実績があります。
遺産分割が円滑に進まない、相続人の一部が遺産を独り占めしようとしているようだ、などのご相談についても、全体の状況を的確に分析した上、ご相談者様が取るべき最適な手続方針をご提案申し上げますので、是非お気軽にご相談ください。

千葉県千葉市出身
平成11年 千葉市立稲毛高等学校卒業
平成15年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
平成16年 司法試験合格
平成17年 最高裁判所司法修習生採用(第59期、大津修習)
平成18年 弁護士登録(千葉県弁護士会)
千葉県市川市の弁護士法人リバーシティ法律事務所に入所
平成23年 法律事務所羅針盤開設に参加
平成29年 筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻(税法コース)修了
平成29年12月
~令和元年11月 総務省官民競争入札等監理委員会事務局政策調査官、同省公共サービス改革推進室政策調査官(併任)


