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【負債を背負わないために】相続放棄の期限が過ぎてからでも間に合うケースと弁護士への相談メリット

1.相続放棄でよくあるご相談

相続放棄は、「亡くなった方(被相続人)の財産(資産および負債の全て)を一切受け継がない」という意思表示を家庭裁判所に対して行う、極めて重要な手続きです。この手続きは、特に以下のような切実な状況で、ご依頼者の人生を負債から守るための防波堤となります。

 

「被相続人に借金や連帯保証債務など、資産を上回るマイナスの財産がある場合」。

多額の負債や、故人が保証人となっていた事実を後から知った場合、相続人がその支払い義務を負わないようにするために、相続放棄は不可欠です。

 

「自分が相続人になったことを知らず、突然債権者から請求が来た場合」。

これは、先順位の相続人(例えば被相続人の子)が全員相続放棄をした結果、次順位の親族(例えば被相続人の兄弟姉妹)に予期せぬ形で相続権が回ってきたケースで発生します。

 

相続放棄は、これら重荷から解放される極めて有用な方法ですが、相続放棄は以下の手続条件を満たして行う必要があります。

 2.相続放棄の期限:民法が定める「3ヶ月の熟慮期間」とは

 民法第9151項は、相続放棄の期限(熟慮期間)を「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内と定めています。この期間内に、家庭裁判所へ正式な申述を行わなければ、原則としてすべての財産・負債を承継する「単純承認」をしたとみなされてしまいます。

 

この「知った時」とは、単に被相続人が亡くなった日だけを指すわけではありません。法的には、次の2つの事実を知った時点を指します。

 

  1. 被相続人の死亡という相続開始の事実
  2. 自分が法律上の相続人となったという事実

 

重要なのは、後順位の相続人が「自分が相続人になった」と知るタイミングです。たとえば、被相続人の子(第一順位)が全員相続放棄をした場合、そのことが確定してから初めて親(第二順位)、兄弟姉妹(第三順位)へと相続権が移動します。この「相続順位が移動した事実を知った日」が、その次順位の相続人にとっての新たな3ヶ月の起算点となるのです。

3.10年後でも相続放棄できる場合

 3ヶ月の期限を過ぎてしまった場合でも、状況によっては相続放棄が認められる例外的なケースが存在します。この例外を判断する根拠となっているのが、最高裁昭和59427日判決によって確立された判例法理です。

(1)熟慮期間の再設定が認められるケース

 最高裁判例は、「3ヶ月以内に相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、そう信じたことにつき相当の理由がある場合」には、熟慮期間は、「相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識しうべかりし時」から起算するのが相当である、と判断しました。

 

具体的には、以下のようなケースで、負債の存在を知った時点が新たな起算点となり、10年以上経過していても相続放棄が認められる可能性が高くなります。

 

①長期間の音信不通:長年別居・音信不通で、被相続人の財産状況を把握する機会が全くなく、遺産がない、あるいは負債もないと信じていた場合。

②負債の隠蔽や誤認:他の相続人が遺産の処理をすべて行い、自分は相続に関わらない(相続財産がない)と思い込んでいたが、後になって債権者から多額の保証債務の請求書が届いた場合。

③調査義務の限界:金融機関や農協に債務の有無を確認するなど相応の調査義務を尽くしたにもかかわらず、「債務なし」との回答を得て相続放棄をしなかったところ、後に多額の債務が判明した場合。

 

(2)相続放棄が認められないケース

 一方で、以下の場合は相続放棄は原則として認められません。

 

①法定単純承認:被相続人の預貯金を引き出して自分の生活費に充てる、不動産を売却するなど、「相続財産を処分した」と見なされる行為を行った場合。

②合理的な理由のない放置:被相続人に借金があることは知っていたにもかかわらず、「どうせ請求は来ないだろう」と安易に考えて、手続きを意図的に怠っていた場合。

4.期限が過ぎてから相続放棄をする場合の対応方法

 期限が過ぎてしまった後の相続放棄は、単なる事務手続きではなく、家庭裁判所に対して期限経過後でも相続放棄が認められるべき事情を十分に説明することが必要となります。これを正確かつ説得力をもって行うためには、専門家である弁護士の関与が重要となります。

  1. 「熟慮期間起算点に関する上申書」の作成

 通常の相続放棄申述書に加え、「なぜ3ヶ月以内に手続きができなかったのか」という、依頼者ごとの個別具体的な経緯と、それが判例法理における「相当な理由」に該当する法的根拠を詳細に記載した書面を作成します。

  1. 客観的証拠の収集と構成

上申書の内容を裏付けるため、債権者からの督促状(到着日の確認が重要)、遺産がないと信じていた状況を示す証拠などを丹念に収集し、裁判所に対して、論理的一貫性のある主張であることを示します。

  1. 家庭裁判所からの照会への対応

相続放棄申述手続においては、家庭裁判所から、事実確認等の照会がなされる場合があり、これに十分な対応ができないと相続放棄が認められないリスクがあります。弁護士が代理人として、対応することにより家庭裁判所への対応もスムーズに行うことができます。

5.相続放棄で失敗しないための重要な注意点

 相続放棄は一度行うと、原則として撤回できません。そのため、以下の注意点を事前に確認することが必要です。

  1. 次の順位の相続人への影響

先順位全員が相続放棄をすると、相続権は次の順位の相続人に自動的に移転します。次順位相続人への配慮を全くせず、安易に相続放棄をしてしまうと、事情を知らない親族に負債を押し付けることになり、親族間トラブルに発展してしまう場合があります。

  1. 遺産の処分行為の禁止

相続放棄をする前であっても、被相続人の財産を勝手に使用・処分してしまうと「単純承認」とみなされ、相続放棄が認められないこととなります。相続放棄を検討する可能性がある場合は、預貯金の引き出しはもちろん、不動産や車の名義変更なども避けるようにしましょう。

  1. 生命保険金の取扱い

生命保険金は、受取人が指定されていれば、原則として相続財産ではなく受取人固有の財産とみなされるため、相続放棄をしても受け取ることができます。ただし、受取人が「相続人全員」と指定されている場合などは生命保険金が相続財産に該当することもあり、放棄をすることで受け取れなくなるリスクもあります。生命保険金については、個別の確認が必要です。

  1. 管理責任の残存

相続放棄が受理されても、現に専有している相続財産については、管理責任が残り、次に相続人となる人が財産を管理できるようになるまで、放棄した相続人がその財産の管理義務を負い続けることになります(民法940条)。

6.相続放棄について弁護士に相談するメリット

 相続問題の中でも特に「期限」が絡む相続放棄は、迅速かつ正確な法的対応が求められます。弁護士に依頼することには以下のようなメリットがあります。

①相続放棄申述受理の確実性アップ

相続開始後3か月経過後などの相続放棄困難事例においては、どのような相続放棄申請書類を作成し、家庭裁判所にどのように事情を説明するかなどによって、手続の円滑性に大きな相違が生じる場合があります。法律専門家である弁護士に相談することで相続放棄申述が受理される確実性を高めることができます。

②親族間トラブルの防止

次順位の相続人へのデリケートな連絡や説明を、法律の専門家である弁護士が代行することで、感情的な対立を回避し、負債の連鎖を防ぐための適切な手続きを促します。

③煩雑な手続から完全解放

戸籍謄本の収集、債権者への対応、裁判所との複雑な書類のやり取りなど、すべての手続きを弁護士が一元的に担うため、ご依頼者は手続的な負担から解放され、ご自身の日常生活に専念できます。

 

相続放棄は、借金という重荷を背負わないための最後の防御線です。「もう遅いかもしれない」と不安に思っている方こそ、一刻も早く専門家の知見を頼るべきです。

7.当事務所のサポート内容

当事務所では、相続放棄を含む相続手続全般について豊富な取り扱い実績があります。

相続放棄についてお悩みでしたら、是非お気軽にご相談ください。

この記事の執筆者
法律事務所羅針盤 弁護士 本田 真郷
保有資格弁護士、中小企業診断士、マンション管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
専門分野相続
経歴

千葉県千葉市出身
平成11年 千葉市立稲毛高等学校卒業
平成15年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
平成16年 司法試験合格
平成17年 最高裁判所司法修習生採用(第59期、大津修習)
平成18年 弁護士登録(千葉県弁護士会)
千葉県市川市の弁護士法人リバーシティ法律事務所に入所
平成23年 法律事務所羅針盤開設に参加
平成29年 筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻(税法コース)修了
平成29年12月
~令和元年11月 総務省官民競争入札等監理委員会事務局政策調査官、同省公共サービス改革推進室政策調査官(併任)

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