婚外子がいる場合の遺産分割の進め方について弁護士が解説
「亡くなった父の戸籍を調べたら、家族の誰も知らなかった子供(婚外子)の名前があった」
「突然、弁護士を通じて『私はあなたの父の子です』と連絡が来た」
このような事態に直面したとき、残されたご家族の受ける精神的ショックは計り知れません。しかし、感情を整理する間もなく、法律上は遺産分割の手続を行わなければ相続手続は進みません。
婚外子(非嫡出子)が相続人に含まれる場合、通常の相続に比べて手続の難易度や紛争リスクが高まります。本コラムでは、相続専門の弁護士が、このデリケートな問題にどう向き合い、どう解決すべきかを解説します。
1.婚外子がいると、なぜ遺産分割が難しくなるのか
なぜ、婚外子がいるだけで遺産分割はこれほどまでに困難を極めるのでしょうか。そこには「法的な壁」と「感情の壁」という2つの大きなハードルが存在するからです。
① 相続人全員の合意が必要というルールの存在
遺産分割協議は、相続人全員の参加と合意がなければ法的に成立しません。たとえ数十年間一度も会ったことがなく、存在すら知らなかった婚外子であっても、被相続人の子である以上、法律上の相続人であり、その人を無視して遺産を分けることは不可能です。婚外子の署名と実印による押印がなければ、原則として、銀行預金の解約も自宅の名義変更もすべてストップしてしまいます。
② 法定相続分は「実子と同じ」という現実
かつての民法では、婚外子(非嫡出子)の相続分は嫡出子(婚姻関係にある夫婦の子)の2分の1とされていました。しかし、平成25年に上記民法の規定を無効と判断する最高裁判決が出されたことに伴い、上記規定は改正され、現在は嫡出子も婚外子も相続分は同じとされています。
「今まで家族として支えてきた自分たちと、会ったこともない相手が同じ権利を持つなんて納得できない」という感情的な反発が、話し合いを拒絶させる最大の要因となります。
③ プライバシーの露呈と心理的葛藤
婚外子の存在は、被相続人の秘められた過去が露呈したことを意味します。配偶者にとっては裏切りと理解されることが多く、子どもたちにとっては親(被相続人)への不信感へと繋がりやすい傾向があります。こうした混乱の中、面識のない相手と金銭的な交渉を行うことは、ご家族にとって耐え難い精神的苦痛となるケースが多くみられます。
2.婚外子がいる場合の対応方法
婚外子の存在が判明した際、パニックにならずに以下のステップで着実に進めることが重要です。
ステップ1:戸籍謄本による認知の確認
まずは、亡くなった方の戸籍を出生から死亡まで遡り、その子が法律上の認知をされているかを厳密に確認します。
認知は大きく分けて、被相続人自身の意思で行う任意認知と、被相続人の意思に関わらず強制的に認知の効果を生じさせる強制認知(裁判認知)があります。
相続手続との関係では、被相続人の遺言書による任意認知が行われるケースもあり、また、被相続人死亡後であっても3年間は認知訴訟を提起することにより強制認知を求めることができることとされています。
相続開始時点で戸籍上認知が確認できない場合でも、遺言による認知、死亡後の強制認知等の可能性があるため、慎重な見極めが必要です。
ステップ2:相手の現住所を特定する
戸籍の附票を取得し、相手が現在どこに住民票を置いているのかを調べます。住所がわからなければ、遺産分割を提案することすらできません。この調査は、弁護士が職務上の調査権限による行うこともできます。
ステップ3:慎重な初回アプローチ
いきなり電話をかけたり、直接自宅を訪問したりするのは、相手を驚かせ、かえって紛争を激化させるため基本的には避けることをお勧めします。まずは相続が発生したこと及びこれに伴い相続手続を進める必要があることなどの事実関係を冷静かつ淡々と記載した書面を送ることが望ましいと考えられます。より確実を期すのであれば、法律専門家である弁護士にご相談いただき、弁護士名義で文書を送ることもご検討ください。
3.婚外子がいる場合の遺産分割の進め方のポイント
トラブルを最小限に抑え、確実に解決させるための戦略的なポイントを解説します。
①徹底した「情報の開示」で不信感を払拭する
婚外子がいる場合、もともとも相続人間に相互不信が生じやすい土壌があります。
情報を隠していると思われてしまうと、不信感が深まり、お互いに疑心暗鬼となって、遺産分割協議の成立を見込めません。必要に応じて預貯金の残高証明書や不動産の査定書などの客観的な資料も添付した財産目録を提示するなど、透明性の高い情報開示を心掛けることが通常の相続手続に比べてより一層重要となります。
②特別受益と寄与分の主張
感情的な不公平感を解消するために、法的な主張を整理します。
婚外子がいる場合、被相続人の身近にいた家族と婚外子とで、被相続人との距離感や利益の享受状況が相当異なるケースも散見されます。
被相続人から生前に相続財産の先渡し(不動産購入資金の生前贈与などが典型例)を受けていた相続人がいる場合は、特別受益として、その持分を当該相続人の相続分から差し引くこととなりますし、被相続人の家業を手伝ったり、献身的な介護をしてきたりした相続人がいる場合には、逆に寄与分として相続分の上乗せを主張できる場合もあります。
このような法的主張については、過度に感情的になることなく、事実関係とこれを踏まえた法的主張を淡々と行うことが重要です。
③「代償分割」による不動産の守り方
実家などの不動産を、婚外子と共有名義にすることは将来のトラブルを温床を放置するようなものです。
不動産については家族が取得する代わりに、婚外子にはその持ち分に見合う金銭等(代償金)を支払う代償分割を積極的に検討することをお勧めします。
4.婚外子がいる場合に弁護士に相談するメリット
婚外子との交渉は、ご家族が直接行うには負担が重いケースが多く、感情的な負担軽減を図る観点からも手続の円滑化を図る観点からも、専門家に任せることをお勧めします。
具体的には以下のようなメリットがあります。
①直接の接触を避け、生活の平穏を守ることができる
婚外子側との関係では、弁護士がすべての窓口となります。相手方からの連絡、無理な要求、あるいは感情的な言葉をすべて弁護士が遮断するため、ご家族は直接相手と話すストレスから解放されます。
②法的な妥当性に基づく冷静な交渉
感情論に陥りやすい場面でも、弁護士は法律上の根拠に基づいた冷静な交渉を行います。ご家族に対しては感情的になり、ときに過度の主張をしてくる相手方である場合も、弁護士が相手である場合は、感情面が抑制され、また根拠のない過度な要求は通らないと理解し、早期解決に応じやすくなるケースもあります。
③遺産分割調停へのスムーズな移行
どれだけ誠意を尽くしても、手紙を無視されたり、話し合いを拒否されたりすることはあります。弁護士に依頼していれば、交渉を継続すべきかどうかの見極めも的確に行うことができ、交渉決裂と判断した場合は迅速に家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立て、裁判所を通じた法的手続において解決を図ることができます。
5.当事務所のサポート内容
「父に隠し子がいたなんて、誰にも相談できない……」
そう思って一人で悩む必要はありません。そのお悩み、私たちが引き受け、あなたが一日も早く穏やかな日常に戻れるよう、全力を尽くします。
当事務所では、遺産分割を含む相続手続全般について、豊富な取り扱い実績があります。
婚外子がいる案件についても、全体の状況を的確に分析した上、ご相談者様が取るべき最適な手続方針をご提案申し上げますので、是非お気軽にご相談ください。

千葉県千葉市出身
平成11年 千葉市立稲毛高等学校卒業
平成15年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
平成16年 司法試験合格
平成17年 最高裁判所司法修習生採用(第59期、大津修習)
平成18年 弁護士登録(千葉県弁護士会)
千葉県市川市の弁護士法人リバーシティ法律事務所に入所
平成23年 法律事務所羅針盤開設に参加
平成29年 筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻(税法コース)修了
平成29年12月
~令和元年11月 総務省官民競争入札等監理委員会事務局政策調査官、同省公共サービス改革推進室政策調査官(併任)


