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遺産分割協議書とは?

法律事務所羅針盤(千葉県市川市)所属の弁護士本田真郷です。
今回は、遺産分割協議書について、作成すべき場合、記載すべき事項や作成時の注意点などについて説明します。

遺産分割協議書を整った体裁・内容で作成することは、後に相続を巡るトラブルの発生を防ぐために重要です。
この記事では、遺産分割協議書に関する基礎知識として、作成すべき場合・記載事項・作成時の注意点などを解説します。

1. 遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは、相続人・包括受遺者の間で行われた遺産分割協議の結果をまとめた書面です。
遺産分割協議書が作成されるのは、遺産分割協議の結果を明確化し、後の相続トラブルを防止することを主な目的としています。
また、不動産や預貯金などの名義変更を行う際にも、遺産分割協議書が添付書類となります。

2. 遺産分割協議書の作成が必要となるケースは?

遺産分割協議書の作成が必要となるのは、以下のいずれかに該当する場合です。

2-1. 遺言書がない場合

被相続人が遺言書を残していない場合、被相続人が死亡した時点で有していた一切の権利義務が、「相続財産」として全相続人・包括受遺者の共有となります(民法898条)。
しかし、相続財産が共有状態のままでは、財産の管理・処分をスムーズに行えないなどの不都合が生じるため、全相続人・包括受遺者の合意により「遺産分割」を行うことが必要です(民法907条1項)。
その際、遺産分割協議の結果を明確にするため、遺産分割協議書を作成する必要があります。

2-2. 遺言書で承継人が指定されていない財産がある場合

遺言書がある場合でも、承継人が指定されていない相続財産が残っていることがあります。
この場合、残った財産は全相続人・包括受遺者の共有となり、遺産分割の対象です。
したがって、残った財産について遺産分割協議を行ったうえで、その結果を遺産分割協議書にまとめる必要があります。

2-3. 遺言書の内容とは異なる遺産分割をする場合

遺言書が存在する場合でも、相続人・包括受遺者の全員が合意した場合には、遺言書とは異なる内容で遺産分割を行うことができると解されています。
相続人・包括受遺者全員の合意に基づき、遺言とは異なる内容で遺産分割をする場合には、その内容を遺産分割協議書にまとめることが必要です。

3. 遺産分割協議書の主な記載事項

遺産分割協議書では、遺産分割の結果を明らかにするとともに、できる限りその後の相続トラブルを防止できるような内容を盛り込むことが大切になります。
遺産分割協議書の主な記載事項は、以下のとおりです。

3-1. 被相続人および当事者を明示する

もっとも基本的な事項として、被相続人・相続人・包括受遺者が誰であるかを明示します。

(例)
被相続人A(〇年〇月〇日死亡)の相続につき、相続人X、相続人Y、包括受遺者Zは、次のとおり遺産分割を行うことに合意する。

3-2. 遺産の内容を特定する

遺産分割の対象となる財産は、他の財産と区別できる程度に特定して記載しなければなりません。
遺産の種類や数が多い場合には、遺産目録にまとめておくとよいでしょう。

(例)
1. 土地
所在:東京都〇〇区〇〇町〇丁目
地番:〇番地〇
地目:宅地
地積:〇〇平方メートル

2. 預貯金
金融機関名:〇〇銀行
支店名:〇〇支店
預金種別:普通
口座番号:〇〇〇〇〇〇〇
金額:500万円

3-3. 遺産を承継する人を明記する

「誰が」「どの遺産を」承継するのかを明確に記載することは、遺産分割協議書においてもっとも重要なポイントです。
物理的に分割可能な遺産については、「どのくらい」承継するか(数量)についても記載します。

(例)
Xは、別紙遺産目録第1項記載の土地を取得する。
Yは、別紙遺産目録第2項記載の預貯金300万円を取得し、Zはその余の200万円を取得する。

3-4. 清算条項

遺産分割の対象となった相続財産につき、遺産分割協議書に記載されている内容のほか、相続人・包括受遺者間の権利義務が一切存在しないことを明記します。
清算条項を規定するのは、後に遺産分割に関する合意を蒸し返されて、紛争に発展することを防止するためです。

(例)
本書の当事者は、別紙遺産目録記載の遺産について、本書に定めるもののほか、当事者間に何らの債権債務関係がないことを確認する。

3-5. 後日判明した遺産の分け方について規定する

遺産分割協議の時点で判明していなかった遺産が、後日判明するケースも考えられます。
その際、遺産分割協議がやり直しとなって紛糾しないように、処理の方法をあらかじめ定めておくことが望ましいでしょう。

(例)
本書に記載なき遺産および後日存在が判明した遺産は、すべてXが取得する。

4. 遺産分割協議書を作成する際の注意点

遺産分割協議書は、後に相続トラブルが発生しないように、不備のない体裁・内容で作成することが大切です。
具体的には、以下の各点に留意するとよいでしょう。

4-1. 必ず相続人・包括受遺者が全員で締結する

遺産分割協議書は、相続権のある相続人および包括受遺者が全員で作成・締結することが必須となります。
もし一人でも欠けていると、遺産分割協議が無効・やり直しになってしまうので注意が必要です。
特に行方不明の相続人・包括受遺者がいる場合には、探し出して連絡するか、不在者財産管理人(民法25条1項)を選任するなどの対応が必要となりますので、必ず弁護士にご相談ください。

4-2. 明確な文言で条項を記載する

遺産の内容や承継人は、明確な文言で記載しなければなりません。
文言が不明確な場合、解釈を巡って相続人同士で揉めてしまったり、不動産や預貯金などの名義変更の際に、手続きがスムーズに進まなかったりするおそれがあるからです。
弁護士にご相談いただければ、当事者が意図した法律効果が確実に発生するように、遺産分割協議書の文言作成をサポートいたします。

4-3. すべての遺産について分割方法を漏れなく指定する

遺産分割協議書は、遺産分割の問題を終局的に解決することを大きな目的としています。
そのためには、判明しているすべての遺産について分割方法を話し合い、その結果を遺産分割協議書に記載することが大切です。
遺産の把握漏れ・記載漏れを防ぐには、事前の財産調査を十分に行い、相続人・包括受遺者の間で、遺産の全体像に関する認識を共有することが重要になります。
弁護士にご相談いただければ、依頼者をはじめとする関係者からのヒアリングにより、遺産の全体像の把握に努めます。
そのうえで、各財産について一つずつ丁寧に分割方法を話し合い、遺産分割協議書の内容へ適切に落とし込むことで、相続トラブルのリスクを最小限に抑えることができます。

5. まとめ

遺産分割協議書をきちんとした体裁・内容で作成することは、相続人同士のトラブルを防止し、また名義変更などの相続手続きをスムーズに進めるうえで、非常に大切です。
遺産分割協議書を作成する際には、明確な文言によって、判明しているすべての遺産についての分割方法を記載する必要があります。
また、財産を特定する方法や相続人不在時の対応など、さまざまな留意事項が存在するため、遺産分割協議書の作成時には弁護士へのご相談をお勧めいたします。

弁護士は、相続トラブル防止・相続手続きの円滑化などの観点から、きちんと効果を発揮する遺産分割協議書の作成をサポートいたします。
遺産分割の問題に直面している相続人・包括受遺者の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

この記事の執筆者
法律事務所羅針盤 弁護士 本田 真郷
保有資格弁護士、中小企業診断士、マンション管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
専門分野相続
経歴

千葉県千葉市出身
平成11年 千葉市立稲毛高等学校卒業
平成15年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
平成16年 司法試験合格
平成17年 最高裁判所司法修習生採用(第59期、大津修習)
平成18年 弁護士登録(千葉県弁護士会)
千葉県市川市の弁護士法人リバーシティ法律事務所に入所
平成23年 法律事務所羅針盤開設に参加
平成29年 筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻(税法コース)修了
平成29年12月
~令和元年11月 総務省官民競争入札等監理委員会事務局政策調査官、同省公共サービス改革推進室政策調査官(併任)

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