養子縁組による遺留分対策のポイントと注意点|相続に詳しい弁護士が解説
遺留分と養子縁組の関係
兄弟姉妹を除く法定相続人には、最低限度の相続分である遺留分が保障されています。
そのため、遺留分を侵害された相続人は、相続人は権利行使を通じて遺留分(自身に保障された最低限度の相続分)を確保することができます。
逆に言えば、被相続人は、本来、自分の財産を自由に処分できるはずであり、相続関係に関わらず、生前贈与や遺言作成を通じて、特定の人に財産を譲ることができるのですが、遺留分を侵害するような生前贈与や遺言については、その効力が失われてしまう場面が生じることとなります。
養子縁組は、親子関係にない者の間に法律上の親子関係を成立させる制度ですが、養子にも遺留分が認められるため、これを利用した遺留分対策が考えられます。
例えば、推定相続人が子1人のみである場合に、その推定相続人以外の者(孫や他の親族など)に全財産を相続させる遺言を書いたケースでは、仮に子が遺留分(このケースでは4分の1)を行使した場合、本来、全財産をあげたかった者には、4分の3に相当する相続財産までしか渡すことができなくなる結果となります。
ここで、財産をあげる相手を養子にした場合、当該養子にも遺留分が生じることから、相対的に子の遺留分が減少し(上のケースでは8分の1)、当該養子は8分の7に相当する相続財産を取得することができることとなります。
このような意味で、養子縁組は遺留分対策になる場合があります。
養子縁組に関連するよくあるトラブル
養子縁組は、血縁関係のない他人との間であっても親子関係を成立させることができること、また、養子であっても、相続においては実子と同様に扱われることから、実子が血縁関係のない養子が相続権を有すること、あるいは養子の存在のために自分の相続分が減ることに不満を持ち、揉める(遺産分割協議が難航する)ケースが挙げられます。
被相続人に実子がいない場合には、養子が相続財産を相続することになり、被相続人の父母や兄弟姉妹が相続できなくなるため、養子と父母及び兄弟姉妹との間でより大きな衝突が起こることも考えられます。
他にも、財産の相続を目的として、被相続人を騙して養子となるケースや、養子の子の代襲相続が問題となるケース、被相続人の親族が養子縁組の事実を知らず、遺産分割協議後に発覚するようなケースなど、相続に関しては、金銭が絡むため、様々なトラブルが挙げられます。
相続トラブルを防ぐための対策
(1)遺言書の作成
被相続人の実子が、養子(特に血縁関係がない場合はなおさら)に自分と同じ相続権があることに反感を持つことは想像に難くありません。
被相続人が死亡したとき、相続手続を行うに際し、遺言書が無い場合には、遺産分割協議を行い、遺産分割を行う必要があります。
この遺産分割協議を行う際に、実子の不満が噴出し、養子と実子との間でトラブルになるおそれがあります。
そこで、被相続人が予め遺言書を作成した場合には、遺産分割協議を行う必要がなくなるため、トラブルの機会を減らすことができるのです。
ただし、前出のような全部の財産を養子に相続させるなどといったことを内容とする遺言書を作成した場合には、実子と養子との間にトラブルが生じる可能性は相当高いものとなるため、トラブルが生じることを想定して遺言作成等を行う必要があります。
(2)生前贈与と遺留分対策のバランスを考える
トラブルを防ぐための方策として、生前贈与を活用することも考えられます。
生前贈与は、被相続人が存命の間に、相続人に対し、一定の財産を前もって贈与しておくというものです。
遺留分計算の基礎となる相続財産の計算は「特別受益」を含めて行います。これは、相続人が相続前10年以内に、被相続人から生計の資本として贈与を受けた財産があるときは、この分の財産はすでに相続を受けたとみなして計算するというものです。
したがって、生前贈与を受けた後10年を経過していれば、特別受益には該当せず、当該財産は遺留分の算定から外れることになります。
これを利用して、相続が見込まれる相当以前(10年以上前)に、遺言により主に財産を承継させたい相続人に対して相当の生前贈与を行っておけば、その生前贈与した財産は遺留分の計算に含まれず、当該相続人に全て承継させることが可能となります。
ただし、生前贈与は、被相続人の下から財産を移してしまうため、自身の存命中に当該財産を利用・処分することができなくなってしまう点、また、遺留分権利者に損害を加えることを知りつつ行われた生前贈与については、相続前の年数にかかわらず、遺留分計算の基礎となる相続財産に加算されてしまう点などには留意が必要です。
(3)他の相続人との合意形成
トラブルを防ぐための方策としては、養子縁組について、予め他の相続人と話し合っておくことも考えられます。
養子と実子との間でトラブルが生じる場合というのは、実子が、被相続人の養子縁組の事実を知らされていない場合や、養子縁組の理由等に納得していない場合であり、これらは、他の相続人と予め話し合いをしておくことで、相続人との衝突をある程度減らすことが期待できます。
弁護士に相談するメリット
弁護士に依頼した場合、弁護士が遺産分割協議の場面において、他の相続人との間に入って交渉するため、感情的なところから生じるトラブルを防ぎつつ、依頼人の利益を最大化するよう交渉することができます。遺産分割協議は相続人全員の同意が必要であることから、こじれてしまうと長期化するおそれがあります。当事者のみで協議を行うと、お互いの主張がぶつかることも多く、こじれてしまう可能性も高いため、弁護士が間に入ることで、交渉により早期解決に導くサポートをすることができます。
また、弁護士は、相続に関する煩雑な手続を代行する他、もし、協議が調わず、調停や審判といった紛争に至った場合でも、依頼人の利益を最大化させるべく、全面的なサポートを行うことができます。
相続開始前の段階であれば、被相続人に対しては適式な遺言書の作成や、トラブルを防ぐための相続に関するアドバイスを行う等により、相続人に対しては、前もって交渉を行い、合意形成をし、それを書面化する等により、トラブルを未然に防ぐためのサポートをすることができます。
当事務所がサポートできること
当事務所では、あなたの現在の状況やご希望をお伺いした上で、その状況やご希望に沿った交渉や法的手続を通じて、プロフェッショナルである弁護士が強力にサポートいたします。
当事務所では、遺留分対策を含む相続案件全般について、豊富な取扱実績があります。
上記のような理由から、「前もって、相続での親族間のトラブルを防ぎたい」「トラブルをなるべく穏便に解決したい」と思いましたら、ぜひ弁護士へご相談ください。

千葉県千葉市出身
平成11年 千葉市立稲毛高等学校卒業
平成15年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
平成16年 司法試験合格
平成17年 最高裁判所司法修習生採用(第59期、大津修習)
平成18年 弁護士登録(千葉県弁護士会)
千葉県市川市の弁護士法人リバーシティ法律事務所に入所
平成23年 法律事務所羅針盤開設に参加
平成29年 筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻(税法コース)修了
平成29年12月
~令和元年11月 総務省官民競争入札等監理委員会事務局政策調査官、同省公共サービス改革推進室政策調査官(併任)